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竪琴の過ち


だいぶ異空間です←おい
ほぼパラレルだと割り切ってお読みください…!
シリアス展開です



「会いたいのか?あの娘に…」


女は優雅に微笑んで、息子を見下げた。

その顔は、揶揄を含んでいるようにさえ見える。
幾年重ねた今となっても、殺生丸は母の顔をまともに見ることは阻まれた。

 

「あれが死んでからそなたはただの殻になってしまったと聞く。
そのようなことでは世を治めることなどできまい」

 

「…ふざけたことを」


「会いたいのか、会いたくないのか」


母の執拗な質問に、殺生丸は顔をあげた。

「なぜ聞く」


「…会えないこともない」


金の瞳が大きく見開いた。

共に後ろに控えていた邪見も、大きく口を開けた。

 

「今冥道の入り口を握っているのは私だ。
すでに娘は死んだ。その事実は変わらぬ。…だが、お前が冥界の果てまでたどり着けたなら…
そこに娘はいる。…あとはお前次第だ。冥界の神とでも話をつけてこればよかろう」

 


殺生丸は微動だにせず、母の冥道石を見つめた。


「…行くか?殺生丸」


「…道を開けろ」


女は大きく息をついて、首から石を外した。

その所作は軽い呆れのようなものも見えたが、あたかも初めから分かっていたかのようにも見えた。



「ほんに素直でないな。まぁ好きにすればよい」

 


目の前に巨大な黒の穴が開き、殺生丸は迷わず飛び込んだ。

暗闇がうねるように殺生丸の身体にまとわりつく。

 

そのまま落ちるように進んだ。

 

 

 

見知った茶色い道が、殺生丸の行き先を示すかのように続いていた。


一歩ずつ確実に歩いた。

道は一本しかないものの、目的地は一向に見えない。


遠くから、獣の雄叫びが聞こえた。

 

(――番犬、といったところか…)

 

殺生丸の前に突如、あのときのような黒犬が現れた。

闘志をむきだした犬は殺生丸に牙をむく。
迷わず天生牙を抜いた。

 


切りつけた犬は塵のように消え去った。


(容易いものだ)

 

幾度も現れる獣も、同様にして切り捨てた。

 

十数匹と倒したのち、遠くに小さくひとつの台座がてんとある。

 

(…あそこか)

 

近付くにつれて、そこに鎮座する男の姿がはっきりとする。


男はただ殺生丸を見据えていた。

 

「何用だ」

男はゆっくりと、探るように問いかけた。


「りんを連れ戻しに来た」


終始顔に暗い影を落とした男は、少しずつ口端をあげた。
笑っているようだった。


「お前、妖怪、だろう。そこそこの力があると見える。お前のその刀の力も。
だが、命は普通果てれば戻らぬものとわかっているはず。なぜそのような愚かなことを言う?」


「…理由などない」

 

男は殺生丸の顔を下からのぞきこむように見て、息をついた。

 

「まぁいい。冥界の犬にも殺されなんだようだ。
望み、叶えてやろう」


男はたいして面白くなさそうに呟いた。


「娘を返す、それでよいのだな?」


「…」


「娘はお前の後をついてゆく。必ず、一定の距離を保ってついてゆく。
お前はただ来た道を引き返せばよい。もう犬はこない。」

 

殺生丸は冥界の神、であるような男を疑うように目を細めてみた。


「信じられぬか?」


「…」


「では、ゆけ。…ただし、絶対に振り向くな。
振り向いてしまえば、二度と娘に会うことはできぬ。たとえこの地に再び来ても、私は現れない。
よいな?」

 

殺生丸は無言で肯定を示し、踵を返して再び同じ道を辿った。

絶対に振り向くな、という男の声が未だに響いていた。

 

 

一定の距離、とはどれくらいなのか。

すぐそこにいるのか。

りん。

 

 

そう考えると、今にもりんの息遣いが耳元に聞こえる気がした。


───殺生丸さま。



鈴のようにころころと唄う旋律が脳内を駆け巡る。

だがそれはすべて空想だとわかっている。

 


長い道のりだった。

行きよりも長い気がする。

 

 

急に得体のしれない不安がのしかかった。

思わず立ち止まる。

その不安に駆られるように声を出した。

 

「―――りん」


無論、返事はない。

息の音も聞こえない。

愛しき匂いさえない。




「―――りん、いるのか」

 

闇が重くのしかかる。
心が沈んでゆく。


 


狂ってしまう。

 


殺生丸は走りだした。

 

 


 

風を切って早く、早く、と進んだ。

遠くに光が見える。

出口、と気付いた時、懐かしき匂いが鼻を掠めた。

 

「…りん…!」

 

何も考えてなどいなかった。

ただ身体が、この身体がりんの匂いを感じたほうを向いた。

 


たしかにそこにりんはいた。

 

「…り…」


「…殺生丸さま…もう、会えない…」

 

 

 

りんの姿が、あの番犬を切りつけたときのように散って消えた。

細かく小さな光だけが散らばって、残るものなど何もなく。
哀しげに眉を寄せるりんの顔が闇に溶けて行った。



りん、と呼ぼうとしたとき、何かある力に弾かれるように、そのまま己が目指していた光へとはじき出された。

 

気がつけば、冥界へ足を踏み入れた場所で、涙を浮かべる邪見と、自分を見下ろす母の前に殺生丸は膝をついていた。

 

…私は。


母はそのまま何も言わず冥道を閉じ、気付いた時にその姿はなかった。

いたのかもしれないが、すでに視界には入らなかった。

 

 

 

すぐそこにあった。

数十年ぶりの、愛しき匂い。

求めて、求めて、指先が触れたそのとき

私は自らそれを遠ざけた―――

 

 

あまりのことに、うまく呼吸ができない。

このまま止まってしまえば―――

 


爪を食いこませた地面が溶けるほど、強く地を握った。

 

 


私は

りんがいなければこれほどにも弱い―――――

 


 


 

再び突発作です。
一気に仕上げたため、理解不能ですが、一応解説を…

一応、ギリシャ神話をもとにしたお話です。
竪琴弾きの男が死んだ妻を取り返しに冥界の神のもとへ行き願いは叶えられるのですが、約束を破って振り返ってしまい、二度と妻と会うことは叶わない…という話です。

書きあげたのちになんですが、殺生丸はこんな馬鹿じゃないと思います←
しっかりりんちゃんが生まれ変わるのを待ち、死は必然的なものだと受け止めるはずです。

ふーん、と思ってください←え

以上、終わらせて下さい…汗

管理人:かの

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