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小説目次


ほぼ殺生丸×りんですが、たまに異色あり、すべて時系列となっています。
旧き昔に書いたものも混同しておりますので、お目汚しもご承知ください・・・

新作→






原作編



守り方      またまた攫われたりん   前サイト7100hitキリリク

千里1      殺生丸が妖怪に憑かれた!?

千里2      千里1の続き

黄昏時の人     ただ待つ。   雪白草2周年祝い捧げもの
 
いつしか咲かなむ      その無邪気さが、腹立たしい    前サイト800hitキリリク

色狂い      殺生丸が…おかしい   前サイト5500hitキリリク

抱擁の時      殺生丸左腕復活記念

風に舞え       ずっと想っていた 私は風だ

神か 妖か        さらわれたりん  前世の因果?    前サイト6400hitキリリク

翡翠       なにかを隠すりん  裏で糸を引くのは…   前サイト1000hitキリリク

玉鬘       殺生丸からの贈り物    前サイト4800hitキリリク







未来編

指先に愛をのせる      りん村生活中 かごめ視点     プラトニカ12345hitキリリク 

宵の歌      熱を出したりん   そろそろ思春期

春遠からじ       宵の歌続編  西国の屋敷へ

若菜        春遠からじ続編  西国でりん奮闘

蝉時雨       若菜続編  たくさんの変化

はたたがみ       蝉時雨続編  殺生丸のお見合い?

冴ゆ雪見      はたたがみ続編  二人での久しぶりの外出

触れてはいけない      「女」のりんと殺生丸の苦悩  前サイト7400hitキリリク

それ以外の選択肢なんてはじめからなかった   祝言を前日にひかえたふたり    前サイト7700hitキリリク

果て無き先を信じて     永遠なんて無いのだから 回想と二人の想い

熱を乞う     想うあまりに ※微艶表現あり  前サイト4900hitキリリク

消失の捕獲    りん、記憶を失っていく     プラトニカ10000hit キリリク

霞立つ花    春、身篭ったりん  喜んでくれると、思ったのに  プラトニカ4567hitキリリク   

悪戯       待望の一子誕生  邪見の気苦労   前サイト5500hitキリリク
 
暮れゆく空の色    結緋初めての異変    プラトニカ4444hitキリリク

再来       最期の時 未来を願う







番外編


明月冷月       闘牙王×御母堂

夕月夜       闘牙王×十六夜

竪琴の過ち      軽くパラレルぎみ(ギリシャ神話より)  

拍手お礼小説1     それは遥か昔  初恋の記憶 

お題      ぼちぼち更新予定

夢見る殺生丸マニアへ禁断の100の質問。

いろはうたお題配布      お題配布します(すべて日本語)

拍手[48回]

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指先に愛をのせる

春が来たら新芽が芽吹くように。
秋にはその命を終えるように。
私が犬夜叉に出会ったことも、そんな必然だった気がする。
 
 
 
時代が変われば世界は簡単に反転した。
食料を得ることは命を摘み取ること。
私が生きることは誰かが死ぬということ。
そして世界は人間だけではないということ。
 
 










 
 
半妖を嫌う半妖の彼は、半妖をけなされることを誰よりも嫌った。
 
 
「俺は人間でもねぇ。妖怪でもねぇ」
「はみ出しモンだ」
 
 
曖昧な同情をすればお前に何がわかると牙を剥かれたこともあった。
 
でもね、犬夜叉。
私はそんなバカみたいな境界線を知らない女の子をひとり、知っている。
 
 
 
 
 
 






 
 
 
「殺生丸さま、今日は来ないのかなー…」
 
 
その子はいつもいつも暇さえあれば空を見上げて。
銀色の髪がたなびく姿を探しているの。
 
私でさえその姿に畏怖を感じずにはいられないというのに。
その子はいとも容易くその妖の頬に手を伸ばすのよ。
 
 
 
 
 
「りんちゃん、」
 
「かごめさま!」
 
「また殺生丸を待ってるの?」
 
「うん、でも今日は来ないみたい」
 
 
 
 
少し眉を下げるようにして、それでもやんわりと弧を描く目元は慈愛に満ちている。
黒曜石のような大きな瞳は絶大なる信頼が詰まっていた。
 
 
 
「暗くなっちゃうね。そろそろ帰ろうか」
 
「はあい」
 
「さっき琥珀くんが来ててね…」
 
 
 
薬草の籠を抱えなおし、とりとめのない言葉を紡ぎながらなんともなしにその子の方に視線を向ければ、微かな希望を込めた瞳が空を彷徨っているのを捉えた。
 




 
 
ああこの子は。
人の生活を一から十まで教えてくれる人間より、
同じ生活を理解してくれる同じ人間より、
なにもかも異なるあの人がいいのね。
 
 
 
 
 






 
 
 
「…りんちゃん、もうすぐ満月なのよ」
 
 
唐突にそう言えば、漆黒の瞳はきょとりとしてあたしに向けられた。
 
「その日は村でお祭りがあるんだって。殺生丸が来てくれるといいね」
 
「…あ、でも、殺生丸さま、人間のお祭りとかあんまり…」
 
「邪見にね、言ってあるの。お祭りの日はりんちゃんがおめかしできると可愛いだろうなあって」
 
 
 
あたしの言葉を理解しきれない小さな頭は、はてなをぶら下げて横に傾げられた。
その姿に小さく笑って、あたしはこの子がしていたように空を仰いだ。
 
 
 
 







 
 
 
きっと月が満ちる日になれば、かの銀色の妖は緑色の妖怪に大きな包みを持たせて空を駆けてくるのだろう。
不愛想に、一寸たりとも口角を上げることもなく小さな身体のあの子に風呂敷包みを押し付けて。
その顔が喜びに紅潮して笑みを咲かし、ぴたりとその身を自分に寄せてくるのを抱き寄せることもなく受け入れるのだろう。
 
 
 











 
いつか彼女が成熟し大人の女と認められる頃には、彼女を手にしようと慕う多くの男の人が現れるかもしれない。
彼女を庇護する妖は、きっとそれを一蹴することもなく、ひたすら冷えた眼差しのままそれを見守るのだと思う。
奪ってその手に収めることはとても簡単だろうけどそれをしないのは、彼にとってはまだまだ幼い彼女のためで。
いずれ殺生丸が与えた『選ぶ権利』と『自由』がりんちゃんの枷になったとしても、りんちゃんにはそれを振り解く強さを持って欲しい。
 
 
 
 





 
 
強く生きる女は種族を超えるのよ。
 
 






 
 
 
ねぇ犬夜叉。
無条件に与えられる愛は、とても心地いいとは思わない?
 
 
 

拍手[62回]

コメレス


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4/30  nanasi さま

たーーだーーいーーまーー!!
待ってたとのお言葉本当にうれしいうれしいうれしい!!
ありがとうございまっす!!!
更新は大陸移動速度ですが、少しでも一緒に楽しんで頂ければとてもしあわせです!
まだまだ殺りん熱は冷めず書いてくつもりなので、いつでもお越しくださいね!




3/25  モカさま

こんにちはー^^
[霞立つ花]と[再来]にコメントありがとうございまっす!
[再来]に関してはもう本当本当本島(!?)古き昔の作品なので、公開している自分の頭を疑い続けて早一年といったところなんですが!
嬉しいコメントありがとうございます!こういうコメントを頂くと非公開にする契機を失うのです!笑
そして妊娠話気に入っていただけてよかったです。
いろいろすっとばしてのあの設定なんですが。笑
ちょっと夫婦っぽく甘くなりすぎずでもお互い超想ってる!という雰囲気を出そうともがいた結果であります!
所詮あんな程度ですが、よければいつでもお越し下さいませ!
んで私を構って下さいませ!笑




3/24 咲さま

わわわっ、[守り方]と[千里1]にコメありがとうございまァーすっ!
どっちも古き昔に書いたものなのでとてもとても恥ずかしいんですが…ですが嬉しいっ!
殺生丸がりんちゃんのために走る(飛ぶ?)のがすきなのです。
もっとスピード感が文章に出ればいいのですが!出ないの!笑
のろのろ更新ですがよければまた構ってやってくださいねー。


3/23  KSMさま

おはよーございまーすっ(今朝だから)
可愛いとのコメントありがとうございます、あなたのほうが可愛いよ!←
私も書きながらきゅんきゅんしてるんで、一緒にきゅんしましょ。
殺生丸とかりんちゃんとか私に関係なく勝手に動くキャラなので。笑
ほんといつでもお越しくださーい!


3/20 あずさ さま

こんにちはあずささま!
私も自分で未だ更新していることが不思議です。笑
でもあずささまのように見てくださってる人がいるんですもんね!

わわわそんなふうに言ってもらえるなんてほんと光栄です!
自分では読み返すのもあひゃーってなるものしかないんですがね!
さらに震災の被害についてご心配とお気遣い、本当にありがとうございます。
私関西住まいなので、少し揺れただけでこれといった被害はなく済んでいます。
しかし現在あずさ様の言うようにエライことになっとりますので、被害のない私たちが頑張らねばと思っています。
募金・節電・献血! これ大事!笑
あずささまのお住まいの地域は大丈夫でしょうか?とりあえず拙宅に来て頂ける程度にはご無事なんだと思って安心しておきます。
大陸移動速度並みの更新になるかと思いますが、暇つぶし程度にいつでもどうぞ!どうぞ!


3/2 遥双葉さま

ううぅ~;;ただいまです!
待って頂いて本当にありがとうございます!会いたかった!!←
【冴ゆ雪見】の続きも早く書きたいと思いつつ未だ筆が進まず・・・
ともかく再開宣言で来てよかったですはい!
これからもよろしくおねがいしまァーーーす!!!





2/19  殺りんさいっこ~ の方

私もそう思います←


拍手[0回]

消失の捕獲


姫は月を見上げる。
蒼く笑う月は、徐々に徐々に、姫の記憶を食んでいた。








りんが熱を出した。この城に来てしばらくはよくあったことだったが、近頃はそれも少なく、よって久しいことだった。
殺生丸の広い掌がりんの額に乗せられると、りんは全自動式に微笑んだが、熱は引かなかった。

「ただの風邪だが・・・いかんせん熱が高い。薬も効かんじゃ手の施しようがない。娘の体力次第だ」

緑色をした皺の多い薬師はそう言い切ったが、殺生丸の眉間の皺は一本たりとも消えない。

「なんとかしろ」

「・・・だから今言っただろうが。手の施しようがない。いいもんでも食わせるんだな」

これ以上殺生丸の激昂に触れてたまるかと言うように、薬師は手早く荷物をまとめ城を発ってしまった。

「・・・せ、殺生丸さま、何かりんの食事を・・・」

「楓に聞いてこい」

「はいぃっ!」

邪見はすぐさま阿吽に飛び乗り、一目散に楓の村へと向かった。
正直ここ数日苦しんでいるのはりんではなく我々従者なのではないかと、邪見は思っている。殺生丸の無言の威圧感、覇気はひりひりと他の妖怪を刺激する。

「・・・まったく、たまらんわ」

一人ごちた邪見は、ぐんぐんと人里へと近づいて行った。









りんの眠る部屋の襖を開けると、ちょうど推古がりんの汗を拭いているところだった。
殺生丸が無言でそこに立っていると、推古は苦笑しつつその手を早める。手早くその行為を終えた推古は、推古を通り過ぎりんへと歩み寄っている殺生丸を呼びとめた。
眉根を寄せて振り返る主を部屋の外へと連れ出す。

「なんだ」

「・・・りんさまですが、その、私のあやふやな人間の知識でありますが」

「はっきり言え」

「・・・人間と言うのは、高い熱が続くとどうもさまざまな器官に異常をきたすようでして」

「・・・」

「たとえば、耳が聞こえなくなったり、すこし記憶が…飛んでしまったり」

それにはさすがの殺生丸の眉も動いた。
この城にりんとすみつき、幾年もの月日が流れた。その期間、常にりんを己の元に置き絶大な力によって庇護してきたつもりだ。現にりんがこの城に来てからこれといった危機にあったことなどない。
だがこの城、己が護るべき範疇にありながら、いやだからこそ人間のことをわかる者などいないここにりんを置いて今のような危機にさらしていては、本末転倒ではないか。


「…どうすれば、よい」

「…私もこう申し上げておきながら、解決策もわかりません。薬師の言うとおり、りんさまの体力次第なのでしょう。…ただ、りんさまが望むことがひとつ」


問うように視線を動かすと、推古は柔らかに笑った。


「お傍にいてあげて下さいませ」


推古はそれだけ言うと、殺生丸の強い視線をしっかりと受け止め、それから滑らかにりんがいる部屋へと視線を移すと、殺生丸に小さく頭を下げその場を立ち去った。
殺生丸はと言うと、無力な自分の掌が役に立つのならば、とりんの部屋の襖に手をかけたのだった。













七日後、りんの熱は無事引いた。
邪見がかごめと楓に伝授された薬草をかき集めたからか、それとも殺生丸が職務中以外常につきっきりでいたからか。
なにはともあれ、りんは身体を起こせるほどに回復した。


「・・・欲しいものはないか」

「・・・ない、よ。殺生丸さまがいるから」


わかっているくせにとでも言うように笑うりんは病の欠片もなく、案じていた身体の異常もないようである。
ふっと安堵の息を吐いたそのとき、次にりんが零したひとことに殺生丸は息をつめた。


「・・・ねぇ殺生丸さま、ここどこだっけ?楓さまのおうちじゃないよね」


すごく立派なところみたい、と言いながらぐるりとあたりを見回す。一方殺生丸は、食い入るようにりんを見つめた。
返事のしない殺生丸に再び視線を戻したりんは、固まったままのそのひとに首をかしげる。


「…殺生丸さま?」

「…ここがわからんのか」

「・・・う、ん・・・え、でも旅の途中でりんがまた熱出しちゃって、ここに寄ってくれたんだよね?」


りんの言葉一つ一つに、頭がついて行かない。
殺生丸はゆっくりと口を開いた。


「…退治屋と法師の、子供を知っているか」

「…珊瑚さまと、弥勒さまの?子供?え、いたの!?」

「…かごめが、戻ってきた。犬夜叉と一緒になった」

「…どこから戻ってきたの?」

「…りん、お前は私の后だ」

「・・・え?」

















「記憶障害ですな」

ぼんやりと薬師と殺生丸の顔を交互に見やるりんを傍目に、薬師は淡々と告げた。

「高熱が続き、中枢器官に異常をきたしたんだろう」

「はやく治せ」

眉を眇めた殺生丸をちらりと目の端に捉えた薬師は、わざとらしく息をついた。

「治せんよ」

「…」

「こればっかりはどうにもできん。人間の薬師であろうと無理な話だ。自然に思い出すのを待てばよかろう。何かきっかけがあるかもしれんしな。なに、すべてを忘れたわけではあるまい。ここの場所がわからんだけなんだろう」


いそいそと荷物をまとめる薬師に殺生丸は返す言葉もない。
お手上げと言われてしまえばそれまでだ。自分にできることもないのだから。


「せ、殺生丸さまっ」

焦ったような声とともに殺生丸の白く澄んだ着物の裾が軽く引かれる。

「りん大丈夫だよ、全然おかしな感じしないんだもん。きっとすぐ思い出すよ」

にこりと目を細めて微笑まれてしまっては、殺生丸も二の句が継げない。
何よりここ数週間見られなかった笑顔が見れたのだ、よしとしよう。

「…今日は一日休んでいろ」

冷えた指先がりんの頬を撫で、殺生丸は腰をあげた。
りんの言うとおり生活に支障があるわけでもない、そのうち思い出すだろうと、そのときは思っていたのだ。














「・・・りんは」

「今は東の縁側に座っております」


こうこうと輝く月夜に反して、邪見の顔は暗い。
主の顔にも影が落ちていた。


りんの状態は良くならなかった。むしろ、悪くなる一方で。
りんは日に日に記憶を失っていった。
熱が引き意識を取り戻したあの日、りんはこの屋敷に来た時分のことを忘れていた。
その数日後、りんは草履を履くことを忘れた。
そしてそのまた数日後、りんは殺生丸に奈落を追わなくていいのかと尋ねた。



りんの記憶は日を増すごとに蝕まれていた。
まるで見えない何かがりんに住み着いて記憶を食んでいるようで、空恐ろしい。
そして大妖が何よりも恐れることがあった。誰にも口にしてはいなかったが、従者の誰もが感じていた。


「りん」

縁側に腰掛け、何を考えているのか月を見上げて白く光る横顔に声をかける。
ゆっくりと首が回り、りんの面がこちらを向いた。そしてゆるりとほほ笑む。

「殺生丸さま」


その薄い唇の隙間から己の名前が紡がれるたびに、殺生丸はひどく安堵した。
そしてそのたびに思った。
まだ大丈夫だ。いやそもそもりんが私を忘れることなどありはしない、あってたまるか、と。

しかしそれはただの自尊で、侵食は止まらなかった。















近頃朝餉をりんに運ぶのは邪見の仕事となっていた。
他の従者たちは毎朝りんに会うたびにきょとんとされることに耐えきれず、邪見に託したのだ。

「りん、起きておるか」

襖を小さく開け顔を覗かせる。布団を片している途中のりんがゆっくりとそちらを向いた。

「今日は天気がいいからの、布団を干すのもいいかもしれんぞ」

そういいながらりんの膳を用意する邪見は、ふと視線を感じて顔をあげた。
邪見が部屋に踏み入った際からりんの動きが止まっている。

「・・・りん?」

「・・・?」

ぽとりとりんの箸を落とした邪見は、りんの問いに答えることなく涙を散らしながら主の元まで駆けだした。




「せせせせ殺生丸さま・・・!」

「煩い」

「り、りりりんが、わしのことを…!」


そこでようやく殺生丸は顔をあげた。筆を机に置くとかたりと乾いた音がする。
ついにきた、と思った。
むせび泣く邪見の傍らを通り過ぎ、殺生丸はりんの部屋へと足を運んだ。



「りん」

開いたままの障子の奥で、りんはつくねんと座っていた。
その言葉に促されるようにしてこちらを向いたりんの顔からはなんの表情も読み取れず、確信した。
ゆっくりと座り込むその身体に近づく。


「私が、わかるか」


小さな頭がゆっくりと振られた。


「…名前を言ってみろ」

再び頭が横に振られる。
歯がゆい思いを押さえつつ、殺生丸はゆっくりと口を動かした。

「お前は話せる。声が出る。言ってみろ」


ちいさな口がおぼつかなく開いた。


「…り…りん…」


そう言ってから自分の声が出ることに驚いたかのように目を丸くしたりんは、ぱっと喉を押さえた。
そうしてから、りんは素早く顔をあげ、殺生丸をその瞳に捉えた。


「…ありがとう…!」


にこりと、花咲くほどの笑顔で、りんは笑った。
声が出るようになったのが殺生丸のおかげだと思ったらしく、笑いながら幾度もありがとうと口にした。


歯を噛み締めると、ぎっと鈍い音がした。
細く伸びた腕を掴み引き寄せる。わっと素っ頓狂な声がりんから漏れた。


りんだ、これはりんだ。
たとえ私のことを忘れても、何一つ消えてしまったとしても。
抱き寄せた腰の細さも黒髪から溢れ出る香りも鈴のように鳴る声も、そして何よりも笑った顔が、りん以外の何物でもない。
それでいいと思った。
りんは変わらん。私が変わらぬように、りんも変わらん。
忘れてしまったのならばこれからその穴を埋めていけばいい。



「・・・あ、あの・・・」


おずおずと腕の中で声をあげたりんを引きはがし、顔を覗く。
少しの焦りが滲んだその瞳は濁ることなく澄んでいて、やはりりんだと再び思う。

「腹が減っていないか」

「…お腹…?減った…」


近くに用意されたままの膳を引き寄せた。


「お前のだ、りん」

そう言うと、いいのかと問うように殺生丸の顔を覗き込む。軽く頷いてやると、また嬉しそうに破顔した。
















諦め、とはまた違うが、りんの病に殺生丸が自分の中で決着をつけたその日のうちに、りんの病にも決着がついた。
それは殺生丸が、りんの熱が引いたら渡そうと前々から準備してあった着物を手渡したときだった。
りんは初め嬉しそうに、しかしすこしの申し訳なさを滲ませながら着物を受け取った。


「ありがとう殺生丸さま!」


こちらを見上げてにこりと笑ったりんは、そう言ってからあれ、と首をかしげた。
手渡した殺生丸のほうも、目を丸めた。
今日一日、りんが己のことを忘れてから、殺生丸はまだ名乗っていなかったのだ。
りんも今自分が口をついた言葉に疑問符を浮かべている。


「…あれ、今なんて…せ、っしょうまる、さま?」

自然と口にした言葉の意味がわからずただただ二人は向かい合ってお互いを見つめた。


「…思い出したのか」

「…あ、れー?」

首をかしげる様子を見て、どうもそういうわけではないらしい。
しかし確かに今、りんは己の名を口にした。

「せっしょうまる、さま。せっしょうまるさま」

確かめるように何度もその言葉を紡ぎ、りんは再び首をかしげながら殺生丸を見上げた。


「なんだか口が勝手に覚えてるみたい」


変なの、と呟きながらりんは自身の唇に指をあてがった。
殺生丸は、ふつふつと湧き上がる感情が促すままにりんの口元にある白い手を掴んだ。


身体が、覚えていた。
頭が忘れようと、りんの身体には己が刻み込まれていたのだ。
その事実が、どうしようもなく殺生丸を突き動かした。どうやらこの感情は喜びと言うらしい。


掴んだ白い手をそのままに腰をかがめ、先程までりんの指先が触れていたそこに自分の唇をあてがう。
たがいに目を開いたまま、至近距離で視線が交わった。
りんは唇が触れた瞬間さらに大きく眼を見開き、それからぎゅっと瞼を閉じた。
いつもの癖だ。口づける時、りんは必ず何かに堪えるように目を固く閉ざす。
やわらかく唇が離れた。


「…殺生丸さま、」

「…りん」


今度はしっかりと、大妖の名を呼んだ。
思い出したのか、と言ってみると、なにを?と問われた。
そこへ突如飛び込んできた小さな緑色の塊。



「りーん!!山奥深くに住まうという仙人から物忘れの薬を賜ってきたぞ!これを飲めばお前も」

「あ、邪見さま」


何事もなく呟かれたその言葉に、邪見の顎がかくっと堕ちた。
そしてふるふると震えだす。


「…お、思い出したのか…!?」

「だから何を?」


忘れていたことをすでに忘れたらしいりんは、不思議そうに殺生丸と邪見を交互に見遣り、ふふっと声を出して笑った。


「ふたりとも変なお顔」



邪見は蹲るようにして喜びにむせび泣き、殺生丸は少し顔をしかめてりんの頭をくしゃりと撫でる。
りんは肩をすくめて、くすぐったそうに笑った。



拍手[102回]

ただいま!



お待たせしました誰も待っていないかもしれないですけど待っていると言ってくださった方にただいまです。
少し予定より早くなりましたが、無事帰ってきましたいぇーい

殺りん熱は以前より幾分穏やかになった気はしますが、世間(二次元の)がにぎわっている間は当分生息するつもりです。
賑わってるよね!?


この数か月の間、拍手やコメントやいろいろと、この更新もないサイトに足を運んでくださった方々本当にありがとうございますっ!はぐ!
さらに休止中の間、一万打を記録しましたありがとうありがとう!!

10月頃に一度、コメントのレスをさせていただきましたので、そちらの返事はこちらからどうぞ。
それから今日この日までに頂いたコメントは↓でお返事しておりますっ


小説のほうはリクエストから少しずつ書き散らしていく予定ですので、しばらく時間をちょーだいと言わせてください。
なにはともあれ本当に本当に応援して下さった方々ありがとーーーー!!!!




 




神野さま

大好きの御言葉ありがとうございますっ!
私も大好き!←



ゆきこさま

えへへー←
嬉しいお言葉をありがとうございます!
自分ではもう読み返すのも恥ずかしいんですよほんと!
新しい長編も書きたいなぁなんて思っとります(・ω・)
こっそり待って頂けたら嬉しいなっ




拍手[13回]

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