現実を見たくないから目をそらした
滞ったような黒々とした夜空を、無駄に爽やかな風が幾度も拭い去って行った。
銀の髪をはためかせ、男は戸をくぐった。
微笑んでそれを迎えるのは、袈裟姿の法師。
無言で座りこんだ男を、法師は黙って歓迎した。
初め、笑っているのかと思った。
前髪をぐしゃりとかき乱し、くつくつと声を漏らす。
赤衣に水滴が落ちてやっと泣いているのだと気付いた。
「…犬夜叉、」
片膝に顔を埋めるように嗚咽を漏らしては泣きじゃくる男に法師は困惑しながらも、ただその姿を見つめていた。
今夜は、いや今夜も星が多い。
このような夜更けといえど、外は嫌に明るかった。
「・・・もう、見ていられねぇんだ、あいつを…」
そう呟いては涙を呑み込み、ぽつりぽつりと話し出した。
今の二人、かごめの様子、これからの行く末。
くぐもった声を引き絞るように、それと一緒に痛みも溶け出せばいいのにと、犬夜叉は言葉を紡いだ。
目を閉じて黙って聞いていた法師は突如荒々しく男の赤の衣を掴んで引き上げた。
「お前は!!そんなもの覚悟の上でかごめさまと共に生きると決めたのだろう!
今になって嘆いてどうする!!」
しかし犬夜叉はその乾いた手を振り払った。
老いた僧の力など、数十年前から姿の変わらない妖に比べれば塵に等しかった。
「んなことわかってる!!…だけど・・・!・・・あいつが、かごめばかりが先に・・・
・・・俺のことなんてどうだったいいんだよ・・・でも、あいつは・・・自分が逝っちまった後の俺のことばかり心配するんだ・・・」
っとに馬鹿みてぇによ、と最後の言葉は消え入ってしまった。
弥勒は一息ついて衣を離し、思わず浮かべてしまった腰を沈めた。
「・・・犬夜叉。確かに私にお前たち二人の気持ちはわからない。
だが、お前が言う別れは誰もが等しく迎えることだ。
・・・私と珊瑚にも訪れるように。
だからこそ、それまでの時をいかに生きるかが重要なのだと私は思う。
・・・かごめさまはそれをわかっておられる。・・・しっかりしろ、犬夜叉」
犬夜叉は俯いたまま黙っていたが、のち妙に素直に頷いた。
「・・・悪かった。邪魔したな」
腰を上げて法師に背を向けると、後ろから声が追いかけた。
「早く行きなさい。そのような顔をしていてはかごめさまが心配します」
犬夜叉は片手を上げてそれを受け止めると、かごめの待つ小屋へと歩き出した。
白く澄んだ粥を皿によそうと、かぐわしい匂いが胸をいっぱいにした。
外には平べったい月が煌々と辺りを照らし、こんな夜でも髪の一筋一筋がはっきりと分かるほどだ。
珊瑚は器を布団の脇に置いた。
ごめんね、と呟きながら女はゆっくりと上体を起こし、器を手に取った。
珊瑚は気にしないでと笑みを見せたが、二人の表情は思い影が漂っている。
「犬夜叉・・・遅いね」
間を持とうとそう言ったが、かごめは小さく頷くだけで黙って少し粥を口にした。
薄茶の米がつやつやと光り、滴るように瑞々しく、視界を暖かく湿らせた。
「・・・犬夜叉がね。・・・優しくって・・・」
ぽつりと漏らした声は震えていて、霞んで散ってしまいそうな声だった。
「・・・手を・・・ね、握ってくれるんだけど・・・私の手は、こんなにも・・・」
小刻みに震える左手に視線を落とした。
擦ればかさりと落ち葉のような音がして、指の先まで皺が覆った、真っ白な手。
心は、想いは、こんなにも変わらないのに。
己の手を見つめたまま静かに涙を浮かべるかごめの肩を、珊瑚はやわらかく抱いた。
この人の、二人の気持ちを思い遣ることなどいくらだってできる。
だがそれは想像の範疇でしかない。
共に時を歩み、疲れたならば共に休み、世を去るときは手を繋いでゆく。
この二人にはそれすら叶わないのだ。
「・・・じゃあ」
珊瑚はかごめの耳元で幼子をあやすよう、そっと囁いた。
「・・・じゃあ、出会わなければよかった・・・?」
瞳の上に膜を張って保っていた均衡がぐらりと崩れ、かごめは涙をこぼした。
静かに首を振った。
「・・・先にいってしまうなら・・・せめて・・・」
かごめの一言一言に頷いて、珊瑚は優しくその背をさすった。
珊瑚はつられて自分の声まで震えてしまわないよう、気を張った。
「ほら、冷めちゃうよ。食べて食べて」
すすめられるがままにかごめは、涙と入り混じった粥を口に運んだ。
───先にいってしまうなら、せめて、少しでも傍で笑っていたい───
砂の擦れる音がして、かごめは顔をあげた。
戸の簾が捲れた。
「おかえりなさい、犬夜叉」
今夜は、いや今夜も星が多い。
犬夜叉は黒々とした空を見上げ、幾多も光る星々の明るさに目を細めた。
俺はあの時、どんな顔をしていたんだろう。
みっともない面を晒しはしなかっただろうか。
ただ、今みたいに眩しかった気がする。
俺は眩しくて、こうやって目を細めたんだ。
犬夜叉は一人空に笑いかけた。
自分が笑えば、同じ笑い声が返ってくる気がした。
───ああそうか。
お前はいつになっても、そうやって笑ってくれるんだな─────
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暮れゆく空の色
何、いまの。
ぬめぬめとした赤が光る。
目が、離せない。
荒い息遣いが気味悪く響くけれど、それが自分のものだと気づいた。
なに
どうして─────
事の起こりは何気ない昼下がり。
邪見の目を盗んで、結緋は屋敷を抜け出した。
父は今日の夜長引いていた仕事から帰ってくる。
そのあいだ屋敷を守る母は、従者たちと小話をしていた。
つまらないつまらないと声を立てても、誰も構ってはくれない。
結緋が仕出かすいたずらの処理は、すでに従者もお手の物となっていた。
せっかく、今日は満月なのに。
満月の日は、なぜか無性に外へ行きたくなる。
そのうえじっとしていられない。
庭を走り回るくらいしかその気分を晴らすことを知らないけれど、もしも自由に外へ出れたなら─────
そんな気分が結緋を駆り立てて、思わず高い塀を越えてしまった。
しばらくして屋敷の中が騒然となることくらい想像がつく。
心配げな母の顔がちらついたが、外の誘惑には勝てなかった。
外に来たのはもう少し幼いとき。
母上と、父上と、それに邪見もいた。
皆でそろって何を見たのか今は思い出せない。
ただなびく髪をかきあげた母上が綺麗で、それに見とれていたのが自分だけではないことに気づいてなんだか悔しかった。
母上と父上のあいだに立ってただ何かを見ていた気がする。
母上とは手を繋いでいた。
父上はただ横にいた。
自分は顔を精一杯上げなければ母上と目を合わせられないのに、簡単に母上を眺められる父が悔しくかったのだけれど
疲れてきて眠たげな結緋を黙って抱き上げてくれたのは父上だった。
塀を越えて少し走ると、森に入っていた。
森に入ったということは、城の結界を抜けたということ。
主が居なくて妖力も手薄になっていたのだろう。
とても新鮮だった。
木々のざわめきも、庭のものとはまったく違う。
野生の荒々しい呼吸の音を肌で感じた。
森を走り川を渡りさまざまな動物を見た。
なんて楽しいの。
どうして父上たちはこんなに楽しいところへ来てはならないなんていうんだろう。
流れる汗を拭い、はだけた着物を締めなおしたとき、異変に気づいた。
静かだ。
先ほどまでささめいていた鳥のさえずりも、植物の声も聞こえない。
匂いは─────
風の匂いを感じようとしたとき、なぜか咄嗟にかがんだ。
ほとんどが本能だった。
結緋の頭上を見たことも無いほど毒々しい色の大蛇がかすめていった。
「・・・っ・・・!」
大蛇は再び向きを変え、若く純粋な生き血を求めて這ってくる。
考える間もなく結緋は走り出した。
どうして匂いに気づかなかったの。
どうしてこんなところに妖怪が。
はやく、はやく。
うちに帰らなきゃ。
匂いをたどれば帰れるはずなのに、屋敷の匂いを感じられない。
後ろを物凄い速さで追ってくる大蛇の音を拾うのに必死で、匂いを感じられなかった。
西国の王の娘が走る速さは相当なものである。
だがそれに苦もなく大蛇はついてくる。
ふと、視界を小さな白が横切った。
それと同時に大蛇の地を這う音が消えた。
───何?
思わず足を止めて振り向いた。
兎。
子兎。
だめ─────
結緋が踵を返したのと、大蛇が子兎に牙を剥いたのはほぼ同時だった。
歯切れの悪い切断の音が響いて、
腕には嫌な感触と重みがあって、
目の前には兎の頭を飲み込む大蛇。
腕の中には赤に染まったその胴体。
黄色の眼光が結緋を捕らえた。
その背後には落ちる太陽と共に昇る月───
それはそれは、とても綺麗な丸だった。
気づけば地に転がるのは、長い胴体を伸ばした蛇。
腸からは嫌な臭いと妖気が流れ出していた。
その横には先ほどの子兎の胴体。
静かに転がっていた。
視界が少しいつもより低い。
視線を落として、目を見張った。
脚が人の足ではない。
血に染まった白銀の毛に覆われていた。
手、手はどこ──?
この姿は────何?
犬、犬だ。
一度父上の本当の姿を見たことがある。
おなじ、結緋もおなじ─────
再び目の前に転がるむくろを見て、我に返った。
結緋が、したの───?
先ほど蛇に追われて走ったときよりも呼吸が、鼓動が、速い。
殺してしまった。
結緋が、殺してしまった─────
「・・・い、いやぁ───っ!!!」
悲壮な遠吠えが暮れかけた森一帯に響いた。
次に気づいたのは、水の中にいるように揺られているときだった。
「あ、起きた・・・!結緋、痛いところは無い?」
母の顔が近づいて、眉を潜めている。
己の手を顔の前までもってきた。
・・・いつもの手だ・・・
「城から出るなと言っただろう」
耳元から聞こえた低い声に、小さく肩が跳ねた。
目の前で銀の髪が揺れる。
父の腕に抱き運ばれていた。
「・・・ごめんなさい」
自分の非を認めた結緋がしおらしく謝ると、りんの細い指が頬を撫でた。
結緋の不在を知って城を抜け出したのだと悟ったりんは、すぐさま従者を連れて森へ赴こうとした。
そのときちょうど早めに帰宅した殺生丸と居合わせた。
りんが事情を説明すると、殺生丸はすでに知っていたようである。
ずいぶんとのんびりしたものだと邪見は思ったが、結緋の元へ再出発しようとする殺生丸にりんは自分も行くといって聞かなかった。
結局二人で結緋を探しに森へと出かけたのである。
森の中で見つけたのは、忌々しい大蛇の死骸と子兎の四肢、そしてその横に倒れる銀の子犬であった。
二人はわが娘を抱き上げて森を去った。
「・・・お前には私の血が濃い。
満月の日には、それがいっそう強くなる。
己で制御できぬうちは・・・」
「・・・犬になっちゃうの?」
結緋は殺生丸の肩の着物を握り締めた。
「・・・本来の姿だ。私にとっても、お前にとっても」
その白の着物に、結緋は顔を押し付けた。
「・・・こわかった。
・・・爪が、気持ちいいくらいよく斬れて・・・」
「じきに慣れる」
殺生丸は歩みを止めた。
その横にりんも立ち止まる。
小高い丘の上。
朱色の夕日が三人を赤く染める。
どこか見覚えがある。
あぁそうだ。昔三人で来たことがあった───
柔らかな風が三人の髪を掬い、銀と黒の髪が風に踊った。
りんはいつものように自分のそれをかきあげた。
やっぱり今でも母上は綺麗─────
思い出したように父の顔を覗くと、殺生丸もまた目を細めて眩しそうにりんを見ている。
銀の髪で目を隠してやろうか。
そんなことを思ったが、今日はやめた。
朱く染まった銀の髪が結緋の頬を撫でる。
母を見つめる父上の姿も、この上なく美しかった。
冴ゆ雪見
半年程前この屋敷を初めて訪れた際青く色づいていた桜の大木は、身を裂くように吹きすさぶ寒風のせいで茶色い枝を剥き出しに立ち尽くしていた。
今日は一段と冷える。
りんは肩に羽織った布をかけ直した。
きんと澄んだ空気が切るようにりんの肌を刺すけれど、それさえ心地いいほど清々しい天気だった。
昼間はいつもとなんらかわらぬ時間を過ごした。
邪見に小言を言われながら屋敷の雑事をこなし、推古たちの指導のもと少し勉学もした。
しかし非日常なことが起こったのは、正午を少し過ぎてから。
昼餉を片していたりんの部屋に突然殺生丸が現れた。
りんから訪ねることはあっても、殺生丸が訪れることなど稀にも程がある。
目を丸めるりんに、殺生丸は言葉を探すようにゆっくりと口を開いた。
「…雪見に行かぬか」
思いがけない言葉に、りんはさらに目を丸くした。
「…雪?」
傍の障子を開けると、いつから降りだしたのだろうか、すでに地は薄白く染まり始めている。
「あ、降ってる…でも殺生丸さま、どうして…」
「行くのか、行かぬのか」
返事を急く殺生丸に、りんは断る理由などない。
「行くっ!!」
「厚手の羽織りは用意させる。支度しろ」
淡泊に言い残して部屋を去った殺生丸の後ろ姿を見送って、りんはおかしさが込み上げて来た。
人間の風流事なんて好まないと言っていたのに。
きっと屋敷に閉じこもったきりのりんを気にかけて誘ってくれたのだろう。
もしかすると、りんの侍女たちに入れ知恵されたのかもしれない。
りんが昔のように外を楽しみがっていると。
どちらにしろ、この上なく嬉しかった。
折角だからと殺生丸が先日与えてくれた新しい着物に着替えた。
薄青の小花がちりばめられた落ち着いた色合いのそれは、艶を放つ黒髪によく合った。
支度を終えて庭に出るともうそこは白一色で、それでもまだはらはらと大粒の白は絶えなかった。
その中に溶け込むかのように佇む銀の妖のもとへと駆け寄ると、薄紫の羽織りを手渡された。
「あれ、阿吽は?それに邪見さまも」
「…阿吽を出す程でもない。邪見は…不要だ。行くぞ」
いつかのように柔らかな所作でりんを抱き上げ、りんが思わず目をつむって次に開いたときにはもう、妖は空高く風を切って飛んでいた。
横を見ると景色が白の斑模様のように過ぎていくのに、不思議と自身に雪の粒が当たらない。
白毛がいつのまにかりんを寒さから守っていた。
「殺生丸さま、どこまで行くの?森を出るの?」
「…森は出ぬ。少し先に雪蜜という妖怪が住んでいる。そこだ」
「妖怪に会いに行くの?」
「…行けばわかる」
ふうんと頷いたきり、りんは久しぶりの新鮮な空の空気を楽しんでいた。
眼下には小さな庵が迫っていた。
殺生丸はその藁葺きの一軒家の前に降り立ち、りんを降ろすや否や無遠慮にその戸を開けた。
「いるか」
殺生丸の呼びかけに突如雪が渦巻き、家の中を覗き込む二人の間を吹雪が通り抜けた。
「犬の…息子?」
幼子のようにか細い声が聞こえた。
目を凝らすと、屋内に吹き込んだ吹雪が徐々に人の形を作っていく。
りんは目を見張った。
そこには人里の子供のようにも見える少年が立っていた。
「ああ、やっぱりそうか。大将の息子だ」
少年が目で二人に入るよう促し、りんが中に入ると、後ろで戸が自然と閉まった。
「なんの用だい」
少年は囲炉裏端に腰を降ろした。
「見せてもらいたいものがある」
少年はふぅんとわかったように頷き、次はりんに視線を移した。
「これが話に聞く人の子かい。…なるほどね」
爪先から頭のてっぺんまで見回されて、りんは居心地悪いのかもぞもぞと身じろいだ。
「…うん、いいよ。約束だしね」
少年はぽんと膝を打って立ち上がった。
「さて、じゃあ準備準備」
途端に少年は雪と化し、再び戸の隙間を流れるように出て行ってしまった。
「殺生丸さま?何が…」
突如辺りが夜のように暗まり、庵の中にいたはずがいつのまにか二人は夜の雪原に立っていた。
「えっ…!?」
思わず殺生丸の袖口に掴まると、硬い指がりんの肩に触れた。
ふと空からはらはらと明るいものが落ちてくることに気付いた。
「雪…?」
手を伸ばしてそれを受けると確かにそれは冷たくて、紛れも無く雪だった。
雪は光の量を変えて輝きながら落ちてくる。
まるで金の粒が降るかのように。
「…すっ…すごいっ!ねぇ殺生丸さま!すごく綺麗!」
興奮して殺生丸の振袖を引っ張りながらも、目はその光景から離せない。
「気に入ったか」
「…うん、すごく…」
嘆息混じりに呟くと、上から皮肉な声がかかった。
「走り回らんでもよいのか」
りんはむぅと額に皺を寄せた。
「もう子供じゃないもんっ」
意地を張るようにそう答えると、すっと風が通るような音が聞こえて、りんは顔をあげた。
暗闇に光る雪が、妖の端正な顔に現れた微笑を照らしていた。
――久しぶり…ううん、初めてかもしれない。 殺生丸さまがこんな風に笑うのを見るの――
思わず長く見上げていると、それに気付いた殺生丸と視線がぶつかった。
しばしの沈黙のあと、なんとなくりんがへらりと笑うと殺生丸は逆に顔をしかめるような顔をした。
「殺生丸さまお顔変だよ」
「…うるさい」
どうでもいいこと+拍手・コメントレス
あっついですねー(゜ Å)
きっついですねー(゜ Å)
近頃超超短い話しか書いていません・・・
時間がないのもあるんですが
私の脳のほうにもそろそろ限界が・・・←
いや諦めませんけど!
続きっぱなしの未来編などもそろそろ続編を書きたいなーと思うんですけど
どうしても時間が・・・;;
皆さまのコメント・拍手が意欲の源です(pω;`)
いつもありがとうございます(__)
以下コメントレスです。
反転してお読みください^^
5/15 千里 にコメントをくださった方
コメントありがとうございます^^
とても拙いものだと承知しておりましたので、コメントをいただけるなんてウハウハです←
私ももっと長編でスペクタクル←?な話を書きたいと常々思っております;;
いつか必ず書きあげますので、よかったらまたそのときに^^
またの訪問をお待ちしています!
いちごさま
コメントありがとうございますっ^^
基本、私が見たいと思う殺りんを書いていますので、それを気に入っていただけるなんて
恐縮の限りです><
いちごさまのコメントのお陰で、早速創作意欲がわいてきました!
時間がある時に少しずつ書いていきたいと思います^^
いつでもお越しください!
さやさま
コメントありがとうございます~!
ガラでもなく←?とてもとても恥ずかしいですがすごくすごく嬉しいです><
今後もさやさまが気に入っていただけるような作品を書いていきたいと思います^^
メールアドレスを添えていただいていましたが、今回はこちらでのお返事ということで申し訳ありませんでした。
今後もよろしくお願いします^^
しーちゃんさま
拍手・コメントありがとうございます!
このようなコメントをいただけるなんて、未来編書いてよかった^^;←
動画のほうも拝見しました!
とても素敵な曲ですね^^
殺りん小説を読むにはぴったりです。
教えていただいてありがとうございました^^
またお越しください!
眠れぬ夜に別れを
月の無い夜だった。
ぺたぺたと、少し湿った足音がかすかに聞こえる。
それと共に、布が擦れるような音も届く。
か弱き少女が拠り所を求めてさまよう姿が容易に想像できた。
足音はやはり自室の前でぴたりとやみ、再び静寂が蘇る。
呼ばれるのを待っているのだろうか。
入ることをためらっているのだろうか。
妖はあえて声をかけず、立ち止まった小さな影を頬杖を突いて眺めた。
「・・・殺生丸さま」
か細い声が障子の隙間を潜るように入ってくる。
「・・・なんだ」
しゅるりとなめらかに障子が開き、弱々しげな顔をした少女は殺生丸と向かい合った。
そのまま黙って敷居をまたぎ、本を広げたままりんを見上げる殺生丸のそばへと腰を下ろした。
それは肩と肩が触れ合うほど近く。
「・・・寝れんのか」
「・・・うん、少し・・・」
少し、何だと問うこともせず、そのまま妖は書物へと目を戻した。
今宵は風も少ない。
従者たちも、明日の準備に精を出している頃だろうが、自室にそのようなわずらわしい音が届かぬようそことは距離を置いてある。
とても静かだった。
ことりと小さな重みが肩にかかる。
眠ったのかと思って視線を移すと、思いがけずりんと目が合った。
黒の瞳の中心に映る己が見えた。
どうしてか視線を外す気になれず、押し黙ったまま互いの瞳を見つめていた。
しかし先に視線を外したのは、見上げるようにしていたりんのほうだった。
「・・・怖かったの」
少し俯き気味に、ぽつりともらした。
「・・・夢か」
ふるふると首を振った。
「・・・すごく、静かで・・・怖かった・・・」
ああ、と殺生丸は解した。
この地に来て数日、毎晩毎晩主人が連れてきた人間に対するたわいも無い噂が絶えず、そこらじゅうから従者の潜めたような声が聞こえていた。
それに加えて、突然帰宅した大妖の気配に反応してこの辺りの小妖怪共が騒いでいた。
それに対応する護衛たちの音も耳に届いていた。
だが近頃はそれも落ち着いてきて、穏やかな夜が増えてきた。
しかも今日はしきりとりんの世話を焼く邪見を愚弟のもとへ遣いに出してしまった。
ゆえに、寂しかったのだろうか。
だがそれならば、我ら妖怪と共に歩み始めるまで一人で過ごした夜はどれほどのものだったのだろう。
それはあまりに遠くて、想像にも及ばぬほどであるけれど。
「好きなだけ居ればよい」
そう告げて、殺生丸は再び書物を眺めた。
りんはすこし顔を上げて美麗な横顔を眺め、再び頭をその肩、というより腕に預けた。
風は無いのに、そよぐような温もりが通り抜けてゆく。
りんは目を閉じた。
これをしあわせとよぶのかな
それはゆっくりゆっくりと少女を、そして白い妖を眠りへといざなうのであった。
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