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果て無き先を信じて



─────はいっ殺生丸さま!

─────・・・いらぬと言うておろう。

─────でもこんなにおいしそうだよ!真っ赤で・・・
あ、冬にはりんのほっぺもこんな色になってるのかなぁ?

─────・・・早く食え

─────はぁい・・・─────









つるりと光った果実を手にとって、りんは口角をあげた。

きっと殺生丸さまは覚えてなんかいない。
それでも、嬉しかった。
あの日二人で眺めたものが、今もここにあることが。


「りん」


背後から低い声がかかる。

少し、意地悪をしてみたい気になった。



「・・・殺生丸さま。懐かしいね、これ。覚えてる・・・?」


たわわに実った果実の木の前で、りんは肩越しに振り返った。

予想通り殺生丸は、眉間に皺を寄せて黙っている。
記憶を辿っているのか、りんの言葉の意味すら分からないのか。

どちらでもよかった。


覚えているはずが無い。
人が過ごす一分を、このひとは一年と数えるようなものなのだから。
りんがどれほど暖めた思い出であろうと、万年のときを生きる妖の時間軸では霞んでしまう。




「・・・殺生丸さまがりんに初めてこれをくれたんだよ」


ぼんやりとだが、妖の記憶にも霞がかった映像が浮かんだ。
己の手から渡される赤の実。


「・・・放っておいたらお前が倒れたからだ」


そっぽを向いて答えた殺生丸に隠れて、りんはひっそりと笑った。

本当は、どうでもいいこと。
殺生丸さまがくれたすべてを、りんが勝手に覚えているだけなのだから。














久しぶりに見た、幼い頃を思わせる悪戯めいた顔つき。
覚えているかと尋ねてきた。

赤い実一つにこんなにも記憶を詰め込める人間と言うものを、どこまで解せばいいのか分からずに黙っていた。

なんとかひっぱりだした記憶を口にすると、りんは少しうつむいて隠れるように笑った。


こうして過ごす今もすでに過去なのだと、このか弱き命と共にすることで嫌と言うほど身に染みた。
だから、あまりに頼りない記憶にすがるより今がすべてなのだと。
私は誰よりも知っている。


守りたいと願えば願うほど、それはこの手をすり抜ける。
それがわからないから、傍にいると決めた。














本当を言うと少し、淋しかった。
同じときを生きられないことが。
思ったより、苦しかった。
その現実に気づいたとき。






二人の間に永遠は存在しないけど。
存在しないから。

だからこそ、今がひどく愛しい。











突発作シンドローム発病・・・!
しゅわわわわわっφ(`д´)
とね。←


実は、私の中の殺りんソングを発見してしまいました・・・!!
いや、すでにそれを知っている人から情報を拝借したのですが。
某動画サイトで、殺りん映像とその曲によるコンビネーションを何気なく見て、
もんのすごい衝動を受けました。

・・・これこそ、まさに私の中の殺りん・・・!!!


その曲はZARDの「永遠」
名曲なんで周知でしょうが。
私も聞いたことありましたが、殺りんとの組み合わせは考えたことありませんでした。


その動画を聞いた途端、
書きたい書きたい書きたい掻きたい掻きたい・・・!←と。


いやでもさすがにあまりにその場で書いたものなので、のちのち手直しするつもりですが。

歌詞からヒントを得るというのが案外難しくて驚きました。
精進精進><

拍手[15回]

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この思いを伝えられたなら


女は向かい合った。
一人の人間に。
それも、もう息の薄い者。


いつもと変わらない端正な顔には、哀れみも悲しみも表れない。
ただ、消えゆくものを惜しむ心が滲んでいた。



「・・・調子はどうだ」

分かりきったことを、と思う。だが他にかける言葉もなかった。


横たわる人間はゆっくりと上体を起こそうとしたが、それを白い手が押しとどめた。

ごめんなさい、と北風のような声が通り過ぎる。




「・・・りん」

呼びかけると、幼い頃から変わらない黒い目を確かに女と合わせた。


「・・・お前はもう死ぬ」

顔色もそのままに、女は述べた。

りんはゆっくりと瞬いたが、そこには焦りも驚きも無かった。


「わかっています」

その答えに、女はしかとうなずいた。

「殺生丸を残して、だ」

酷な事だが、と言う女に、りんは心の底から感謝を述べた。



─────このお方がいたから、りんは・・・───



「覚悟の上のことです」



そうか、と女はうつむいた。


しばらく沈黙が流れる。
すると、おもむろに女は懐から包みを取り出した。
それを広げると、赤い丸薬が数粒転がった。

不思議そうにそれを見つめるりんに、女はその粒をひとつ手に取った。


「これは、我が一族の妖血。我らの血はすべてここに繋がっている。
・・・もしも、そなたが殺生丸と同じ時を生き続けたいのなら・・・これを服せば、そなたも半永久の命を手に入れることができる」


りんはゆっくりと、丸薬から女に視線を移した。

やはりその顔から感情を読み取るのは難しかった。
だが、確かなものがその瞳にはあった。


「・・・妖怪になる、ということですか」

「まぁ、そういうことだ」




りんは少しの間目を閉じて、それからゆっくりと首を横に振った。


「りんには必要ありません」




女はすでにその答えを知っていたかのように頷いたが、付け足したように、何故と尋ねた。


「・・・りんと殺生丸さまとの事は、すべてりんが人で殺生丸さまが妖怪であったからこそ。
りんは人として限りある生を全うします」





そうか、と目を伏せた女は静かに丸薬を懐に戻した。
それから顔を上げ、薄い手のひらをりんの頬に寄せた。


「・・・幸せ者だな」


そう呟くと、女は腰を上げ、りんに背を向けた。







「・・・殺生丸さまは」


呼び止めるようなりんの声に、女は半身振り返った。



「殺生丸さまは・・・それをお望みでしょうか」




揺れる黒の瞳を覗き込み、女はそっと笑った。





「あやつの願いはいつもそなたと共にある。案ずることは無い」


そのまま障子に手をかけ、女は静かに部屋を後にした。
りんは最後までその背を見つめていた。






部屋の前には、まだ若いがしっかりとした大木がそそり立つ。
寒風がその葉を散らし、刻々と若木は裸になってゆく。


女は日が傾き、月が露になり始めるまでその大木を見上げていた。


拍手[16回]

小説あとがき・拍手レス


久々に、といっても数週間ですが。
小説書き上げました。

…解釈はおまかせします。

が。

私的解釈としては、軽くパラレルな気分で書きました。
どうしてもパラレル(洋風など)には自分で書くのに抵抗があって、でも書いてみたい…
と葛藤していたので、それならば立場などをちょっとずつ変えちまえっ
てな感じです←え?



イメージとしては、りんちゃんが殺生丸さまの何人もの妾のうちの一人。
りんちゃんだけ今まで特別な寵愛を受けていますと。
でも身分が低いから本妻にはなれませんと。
そんなりんちゃんに、りんちゃんと同身分の男からの求婚。
妾として暮らすよりは、確実に安定した生活を送れます。
しかしりんちゃんはさらさら受け入れる気はありません。
妾としてでも、殺生丸さまのお傍にいることを決めます。

しかしりんちゃんの婚儀の話を耳にした殺生丸は、りんちゃんの今後のためにも
りんちゃんを手放すことを決めます。
りんちゃんにそのことを伝え、そのままりんちゃんは殺生丸の屋敷をでることに。
屋敷を出る前日が、「今更そんなこと言わないで」です。


あれ、題名…関係なくない?
てな雰囲気がしますが、殺生丸さまの表情を見たりんちゃんに
「今更そんなこと言わないで」的なものをだしたかったのです・・・!
見事に撃沈ですが。






しかしあのお題小説たちは結構鬱な集まりになりそうです^^;

でもあのお題小説の中でいろんなキャラクターを登場させたいなーとももくろんでいます。
「無色透明な世界を歩む」で桔梗お姉さまが書けたのはよかったかなと。



しかしお題の殺生丸さまは軽くへたれが多いですし
りんちゃんはシュールで可愛くない…!!

精進せねば><








以下は、拍手レスです。
反転してお読みください。




遥双葉様

コメントありがとうございます・・・!
私的解釈は上記のとおりですが、またよくわからないものをすみません><
遥双葉さまのすばらしいだろう脳内でこの話がどう展開しているのか
拝見してみたいものです^^
遥双葉さまのブログにおじゃましたところ、近頃お仕事が忙しいようで。
体調崩さぬよう頑張ってくださいね^^
いつでもお待ちしています☆

拍手[3回]

今更そんな事言わないで



乾いた木の目の上を、何度も布を滑らせた。
磨きすぎて嫌に光った床が、嘲笑うかのように眩しい。
腰を上げ、磨かれた長い廊下の先を見遣った。




最後だ。
これも、今日で最後───






ぱたり、と小さな何かが床にぶつかった。
磨いたばかりの廊下に小さく染み付いた水滴が己の涙と気づくまで、少し時間がかかった。




─────どうして。




恐る恐る指先で目元を拭うと、玉のような涙が指の上で小刻みに震えている。





─────どうして、泣いているの。





瞳を覆う膜を隠すように、堅く目を閉じた。




─────行けばいいと、言ったのに。






背後から、清い衣擦れの音が敏感に耳を撃った。

振り向く勇気なんて、あるはずが無い。




「何故──泣く」




涙の匂いまで、この人には分かってしまうのだろうか。

それならばせめて、明日を待つ喜びの涙だと思って欲しい。





「・・・明日が待ち遠しいの」




上手く言えただろうか。
震えてはいなかっただろうか。



確かめるために、振り向いた。








─────あなたが行けばいいといったから。


─────だから私は決めたのに。





─────どうしてそんな顔をするの。









これ以上ここにいてはいけない。
我慢ができないから。




「・・・明日の仕度があるから」





立ち上がったときの軽い眩暈は、初めてこの人に抱かれたときと似ていた。







────だめだ。
思い出してはいけない。





でも、下を向いてもいけない。






前を見据える。
銀の人が立っていた。







あなたは私が泣いたとき、いつも困った顔をするのに。


どうして今日はあなたが泣きそうなの。










一歩ずつ近づいて、隣に並んで、一歩ずつ遠ざかる。




視線を外すことはなかったけれど、腕を掴んでもくれなかった。


莫迦な期待が寒い。









唯一を手放してしまったのに
幸せになんてなれるはずない。

 

拍手[10回]

無色透明な世界を歩む


 

白と赤と黒が風に舞う。
たなびくその袖を包むようにゆったりと彷徨う、幾すじもの蒼い妖怪。

 

まだものの美醜もわからぬ年端の少女が見ても、その姿はとても美しかった。

 

 

 

 

 

 

 

女は一人の少女の前に、ためらうことなく膝を着く。
りんはただその真っ直ぐな黒の瞳に映る自分を見つめた。


「・・・怖くは、ないか?」


女は、りんの土で汚れた頬を拭った。
りんの肩は小さく跳ねる。


────あまりに冷たい。

 


りんの素直な反応に、女は思い出したかのように苦笑した。

「──ごめんね」


りんは急いで首を振った。
何を違うのか分からないけれど。

 


「・・・あのっ・・・巫女様は、どうして・・・」


「・・・お前は人でないものと共にいるのだろう──?」


女の真っ直ぐな視線がりんをつかまえた。
すぐに脳裏に浮かんだ、銀の妖を言っているのだとわかった。
この後に続く言葉は、いつだって決まっている。

 

 


妖怪となど生きるべきではない。
戻れ、人の世に。

 

 

 


しかし女は不安げにうなずくりんの頭を掠めるように撫でるだけで、聞きなれた言葉は口にしなかった。


「・・・お前が選んだならそれでよい」

 

女が立ち上がると共に、広い袖がりんの頬に触れた。
そして思い出した。
この赤は─────

 

 

「・・・巫女様、もしかして犬夜叉さまの村の・・・」


女は少し止まり、すぐに微笑んだ。


あまりに脆い笑顔だった。

 

 

 


「妖と人は相容れぬけれど───痛みを分かつことはできる。
だが、生者と死人が想い交わることはできない─────」

 

 

強く生きろ、と言い残して、女は再び深い森の奥へと溶けていった。

 

 

 

 

 

どういう意味だろう。
「妖」と「人」の意味は分かるけれど、「痛みを分かつ」とはなんだろう。
「生者」と「死人」の意味は分かるけれど、「想い交わる」とは。


かごめさまに似ている人だったなぁとぼんやり考えていると、すぐに殺生丸さまと邪見さまが帰ってきた。

 

 

 

 

 

殺生丸は地に着き、まずその匂いに顔をしかめた。
りんに少し、墓土の匂いが移っている。
原因など、考えなくともわかる。

 

「・・・り、」


己を見上げて首を傾げるりんを見て、やめた。
土の塊である死人がりんに与えるものなど、高が知れている。

殺生丸はそのままきびすを返し、歩を進めた。
殺生丸の続く言葉を対して気にも留めず、りんと邪見もその後についた。

 

それから再びその女の存在を意識したのは、すでに女がこの世を去るときだった。

 

 

 

 

 

 

 


桔梗は先ほど触れたあどけない頬のぬくもりをいつまでも指先に感じていた。


皮肉なものだ。
この手に温度など無いのに。
他人の温度はいとも容易く己に残る。

 

 

「・・・余計なことを」

 

強く生きろなど、今をひたすら生きる幼子に諭すなど馬鹿げている。

 


死んだ魚の腹のように白い指を口先に強く押し当てた。
堅い歯は簡単にその指に傷をつけた。


血は、滲まない。

 


五〇年前、愛しき者と己をあれほど真っ赤に染めたものが、今は恋しくてたまらなかった。

 

 

 

「・・・犬夜叉・・・」

 

 


目を閉じると、残像のように映像が流れていく。
それは瞼の裏に刻まれたように消えてはくれない。

 

森の木々がざわめく。
緑に鮮血が走る。
頭の頂点からつま先まで、黒で満たされてゆく───憎しみだ。
弓がしなった。

 

 

 

 

目じりを押さえると、あっけなく記憶は散った。


もう過ぎたこと。

 

桔梗は前を見据え、地を踏みしめる。

 


─────強くなければ。
せめて、自分自身のためにも。


 






殺りん+桔梗に見せかけて、殺りんより桔梗お姉さまが書きたかったというだけの代物←

いいですね、お題は。

進めやすい・・・

拍手[12回]

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